九州の醤油は甘い!
聞いたことある方、もしくは、九州から九州以外に移った先の醤油の味に違和感を覚えた方、そんな方多いのではないでしょうか?
九州の人は、他所から来た友人に「醤油が甘い」って言われた。
九州から関東に移り住んだ人は、馴染みの甘みのある醤油の味が懐かしい。
どちらともに、馴染みのある醤油の味に違いを感じているのだと思います。
九州の甘い醤油のように、醤油の味は、味噌と同様に地域性があるのです。
その背景には、その土地の気候風土や、食文化が大きく影響しています。
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醤油が甘いのは九州だけじゃない!?
甘い醤油といえば「九州の醤油」とされるケースが多いように思いますが、実際には九州だけではなくて、日本海沿岸部、北陸地方や東北地方でも比較的甘い醤油が好まれています。
石川県、山形県や秋田県、九州以外のこれらの一部地域でも醤油が甘いといわれます。
傾向として、沿岸地域に甘い醤油を好む地域が多くあって、内陸に行くほど甘みよりも塩気、塩分が強めの醤油になっているように感じます。
これには、沿岸部の地域で食べられる食材、魚や魚介類の影響がまず挙げられると云います。
それらの地域以外でも、普通の濃口醤油、薄口醤油のほか、さしみ醤油、うまくち醤油として、比較的甘みのある醤油を見かけることがあります。
さしみ醤油、名前のとおり刺身を食べる時に使う(適している、おすすめ)醤油になりますが、一般的な濃口醤油と比較して、若干トロッとしていて、濃い口よりも甘みがあるさしみ醤油。
それは、トロッとした液体が刺身によく絡んで醤油が落ちにくく、甘みが刺身を食べやすくすることから「さしみ醤油」として適正を示しているのかと思います。
九州の醤油だけが甘いと言われる何故?
では、なぜ「九州の醤油は甘い!」というふうに、甘い醤油を代表するような九州の醤油となったのか?
醤油の甘さの違いに、さきほど考察した「沿岸部」というキーワードをひとつポイントとして考えましたが、もう一つ!
同じ沿岸部地方の甘い醤油でも、南に行けば行くほど醤油が甘くなる説。
その説を裏付けるかのように、同じ九州でも北部九州よりも九州南部の鹿児島県や宮崎県の醤油のほうが、北部のものと比較して断然甘い!とされているのです。
- 気温が高い地域ほど甘みを欲するから
- 砂糖の産地が近いから、砂糖が手に入りやすかったことから
といった具合に諸説あり、長崎に始まる南蛮貿易の影響で、カステラなどに代表されるお菓子、長崎の卓袱料理や、豚の角煮など甘みを効かせた調理に由来するとする説。
はたまた、九州南部は、蒸留酒である焼酎の産地であり、甘みのある日本酒を飲む機会よりも、甘みのない焼酎を飲むことが多いことから、甘みのない焼酎には、甘みのあるツマミ、肴が重宝され、対して酒自体に甘み、糖分を含むので肴には甘みをない、塩気の効いたものが合うといった説まで、実にさまざまな「甘い醤油論」があるようです。
- 蒸留酒=糖分を含まない、したがって甘い味付け(肴)に合う
ちなみに、砂糖が日本国内に入通し始めるのは1600年代、17世紀のことです。
もともと、砂糖は「舶来品」として輸入されて日本にもたらされました。
江戸時代には海外からの主要な輸入品のひとつに砂糖があげられるようになり、オランダや中国の貿易船がバラスト代わりの底荷として大量の砂糖を出島に持ち込んだ。このころ日本からは大量の金・銀が産出されており、その経済力をバックに砂糖は高値で輸入され、大量の砂糖供給は、砂糖を使った和菓子の発達をもたらした。
しかし17世紀後半には金銀は枯渇し、金銀流出の原因のひとつとなっていた砂糖輸入を減らすために、江戸幕府の将軍徳川吉宗が琉球からサトウキビをとりよせて江戸城内で栽培させ、サトウキビの栽培を奨励して砂糖の国産化をもくろんだ。また、殖産興業を目指す各藩も価格の高い砂糖に着目し、自領内で栽培を奨励した。
砂糖 - Wikipedia
当初、砂糖は金銀と交換するような価値であり、今では想像もつかないほどの価値を持ち、生産するにもその代表的な原料になるサトウキビの産地においてのみ生産されるものでしたので、消費に供給がなかなか追いつかない状況であったことが考えられます。
サトウキビの生産が可能な、温暖な地である九州南部地方、鹿児島や沖縄の離島エリアは比較的、砂糖が手に入りやすいこともあって甘みのある醤油も広まったのだろうと、いうことです。
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癖になる?甘口醤油
土地にまつわる食材との相性のほか、砂糖の流通が以前のように困難な状況もない今、醤油は「九州」の枠を飛び越えて各地で、さしみ醤油やうまくち醤油として、身近に手に取ることができるようになりました。
ですが、白味噌や赤味噌など様々な味わいの味噌が各地で重用されることと同じく醤油にもご当地ならでわの味わいが存在します。
全国区になった甘い醤油も、なかにはご当地ならでわの、あま~い醤油が存在したり、その粘度、トロッとした加減が、品ごとに違ったりと、やはり「本場、九州の甘い醤油」を筆頭に、食べつけると、もとには戻れないような甘口醤油が存在するのも事実です。
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