最近読みました本に、今では当たり前になった?当たり前の習慣として捉えていた「肉食」について、古の日本ではタブー、肉食を規制していた時代があること改めて認識したのですが、仏教伝来とともに、国教として仏教が崇められることで同時に、肉食もタブーとされた時期がありました。
大和政権、675年に天武天皇が狩猟・漁獲の方法を制限し、牛・馬・犬・猿・鶏の肉食を禁止しました。これが、日本における最初の肉食禁止令-「肉食禁止令の詔」。
「最初の」ということは、移行も肉食を禁じた法令が、度々登場することになります。
仏教の影響が色濃い日本において、仏教においてタブーとされる肉食を禁止する流れは必然なのかも知れませんが、仏僧以外の一般大衆にも総じて、肉食を禁じた時期があることは、現在の食生活からするとイメージが湧きません。
そもそも、仏教伝来前の日本ではまだ、家畜を持つ(育てる)習慣がない中、狩りで得た鹿や猪を食べていたとされますが、食肉禁止令をはじめ、獣肉を食べることが敬遠されるようになったそうです。
ちなみに、敬遠されていたものの肉食文化が途絶えるようなことはなかったようです。
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仏教における「肉食」「殺生」のタブー
仏教における「戒(いましめ)」、「5戒」として仏教においては守るべき5つの戒めがあるとされます。
五戒
五戒(ごかい, サンスクリット語: panca??la, パーリ語: pancas?la)とは、仏教において性別を問わず、在家信者が守るべき基本的な五つの戒(シーラ)のこと。
不殺生戒(ふせっしょうかい, 梵: pr???tip?t?t prativirata?) – 生き物を故意に殺してはならない。
不偸盗戒(ふちゅうとうかい, 梵: adatt?d?n?t prativirata?) – 他人のものを盗んではいけない。
不邪婬戒(ふじゃいんかい, 梵: k?ma-mithy?c?r?t prativirata?) – 不道徳な性行為を行ってはならない。
不妄語戒(ふもうごかい, 梵: m???v?d?t prativirata?) – 嘘をついてはいけない。
不飲酒戒(ふおんじゅかい, 梵: sur?maireya-madyapram?da-sth?n?t prativirata?) – 酒類を飲んではならない。
五戒 - Wikipedia
不殺生戒・・・生き物を故意に殺してはならない
1番目の戒めとして、命を大切にして死を重くみることを重んじ、命を奪うことを禁じています。その生命には、動物や、小さな昆虫の命を奪うことも含まれ、生けるものの尊厳、命の尊重を説いています。
先の、「肉食禁止令の詔」の天武天皇は仏教に帰依する中で肉食の禁止と、もう一つ「放生」によって功徳を積むことで、国の豊穣を祈願したとされています。
放生とは、字の通り「生を放つ」、すなわち、捕った魚を水に返したり、飼っている鳥などを野に放つ行為をさしています。
天武天皇によって天武5年に出された「放生令」は、毎年の収穫によって、動物や魚類を購入し、それらを放つよう命じたものとされます。
その習慣、儀式が「放生会(ほうじょうえ)」です。
日本における放生会の起源であるとされる旧暦の8月15日、現在では体育の日を最終日とする3日間に催される「仲秋祭」として、大分県の宇佐神宮に残っています。
全国に約44,000社ある八幡宮の総本社である宇佐神宮ですが、ほか日本3大八幡宮とされる京都の石清水八幡宮、福岡の筥崎宮、また神奈川県の鶴岡八幡宮でも、放生会の名残とされる「鈴虫放生祭」が、毎年行われます。
福岡にある筥崎宮では毎年9月に「放生会(ほうじょうや)」といって、「博多三大祭」として今もなお大きなイベントとして受け継がれています。
放生会
放生会(ほうじょうや)は福岡県福岡市東区の筥崎宮で毎年9月12日から9月18日まで開催される祭りである。
博多どんたく、博多祇園山笠と並ぶ博多三大祭りの一つである。7日間にわたり様々な神事や神賑わい行事が行われるほか、2年に一度(西暦の奇数年)、御神幸(神幸祭)が行われる。神道の放生会の一種であるが、当宮の行事は読みが「ほうじょうえ」ではなく「ほうじょうや」である。
筥崎宮の放生会は「万物の生命をいつくしみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝する」という趣旨により行われる。期間中に行われる供養祈願祭では、やむを得ず殺生した生き物や、死亡したペットなどの供養と、商売繁盛、家内安全の祈願を行う。
放生会 (筥崎宮) - Wikipedia
日本以外の仏教国でも、台湾、タイ、インドでは今でも放生用として「亀や魚、蛙、貝、鳥」を放つ習慣があるそうです。
日本でも亀や魚を逃がすために、寺院などには「放生池」としての目的で池が設けられていました。
亀を放つ、鳥を放つといえば「浦島太郎」「鶴の恩返し」のお話を思い出します。
これらも、仏教の不殺生戒を背景としたお話なのかも知れません。
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日本における肉食文化
現代の様々な背景、環境や文化(宗教を含む)、政治的傾向から、高度成長期移行の肉食偏重とは違った流れもとに、最近の昆虫食や、代替え肉さまざまな食材が市場は出回っています。
もちろん、健康上の理由で肉食を減らして、菜食を重んじる必要もあったりと、我々の日常の食生活も変化の兆しを感じるところです。
昆虫食
グルテンミートをはじめとする代替え肉
豆乳やアーモンドミルク、ココナッツミルク、植物性ミルクなどなど
動物性の食品からの変化は、これからもどんどん進んでいくのかも知れません。
とはいえ、差し迫った健康上の理由など、急を要する事情をのぞいては、お店で日常的に購入することができる、お肉や魚、野菜などといった食べ物、食事を、もっと楽しみたいと思う今日このごろです。
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