立春、立夏、立秋、立冬など、これらは季節を表し示す言葉ですが、例えば「春」の季節であれば、立春のほか、雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨の6つに分かれるのをご存知でしょうか?
春、夏、秋、冬の四季を、それぞれ6つに分けて、計24区分。
それを二十四節気(にじゅうしせっき)と呼びます。半月毎の季節の変化を示しているこれらは、さらに約5日ごとに分けて、気候や動植物の変化しめす「七十二候(しちじゅうにこう」と、季節を表す方法は、現在の私たちの暮らしの中では、あまり見たり感じたりすることはありませんが、ちょっとした季節のうつろいを感じることができる、素敵な暦です。
例えば、今時分を二十四節気では「啓蟄(けいちつ)」とし
七十二候では、3月10日頃を「桃始笑(ももはじめてさく)」、15日ごろを「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」とした短文で表しています。
さくらの日である、3月25日頃は「桜始開(さくらはじめてひらく)」ですね。
毎日、温かい日と寒い日が数日おきに繰り返され、少しずつ散歩をしたり、外に出ることが心地よく感じられるようになるこの頃、七十二候の「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」(今日が2021年3月9日)。
葉を食べる青虫が蝶になるころ。菜の花が咲いて春本番を迎える頃、といったかんじでしょうか。
菜の花や、アブラナの畑をチラチラと飛び交う紋白蝶。
子供の頃、よく見かけた光景です。
胡蝶の夢、司馬遼太郎の小説のタイトルにもありますが、古く中国の思想家・荘子の「夢の中の自分が現実か現実の方が夢なのか、夢の中で蝶になった自分が、本当は蝶なのか、人間なのか、人間になっている夢を見ている蝶なのか」疑って区別がつかなくなるというお話から、夢と現実の区別がつかないことを胡蝶の夢として使われます。
胡蝶の夢
夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話である。
胡蝶の夢 - Wikipedia
チラチラと飛び交う蝶を昔の人は「夢見鳥(ゆめみどり)」と呼んだそうです。
二十四節気「春分(しゅんぶん)」
春分の日と、日本の祝日としてありますが、二十四節気「啓蟄」次が「春分」です。
さらに春分を七十二候で見てみると
- 雀始巣(すずめはじめてすくう)3月20日頃
- 桜始開(さくらはじめてひらく)3月25日頃
- 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)3月30日頃
このように見立てています。
雀始巣(すずめはじめてすくう、スズメが巣作りを始める頃。心なしか小鳥のさえずりが多く聞こえるようになり、その活動が盛んになっていることを感じるころ。
続く、桜始開(さくらはじめてひらく)頃は、さくらの日として制定されているころ、さくらが開花し始める頃。
そして、3月の終わり頃は「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」。
春の到来を告げる雷が鳴り始める頃、冬眠していた土の中の虫たち雷に驚いて目覚め、出てくるとして「虫出しの雷」とも呼ばれます。
このころは、あたたかい日が増えてきて油断していると、雨や雹をともない雷がなったり、この繰り返しの時期をすぎると、ほんとにあたたかなで穏やかな春の日が来るのですが、春の嵐、春の雷の時期をこのように見立てています。
この時期の雷ですが、あまり良い印象がないといいますか、ちょっと気分が上がらないひとときとなるのですが、実は、この春の雷が多くなる年は、格言にもあるように「稲妻ひとひかりで稲が一寸伸びる」、稲がよく育つ、つまり豊作になる予兆としても捉えられたりするそうです。
これには、科学的な根拠もあって雷の放電によって、空気中の窒素が酸素と結びつきます。これが窒素酸化物となり、雨に溶けて降り注ぎます。
雷がなり、植物の成長に欠かせない三大要素の窒素・リン酸・カリウムのうち、窒素がたくさん降る、作物がよく育つ、という嘘のようなホントの話なのだそうです。
雷を暦に詠んだように、雷もまた生活に欠かせないものなのだと言うことができます。
ゴロゴロゴロゴロ~とけたたましく恐ろしい音を鳴らし、被害をもたらす雷としての側面以外に、自然の仕組みの1つとして存在する雷を、昔の人達は見つめ大切に感じていたことと思います。
このように、七十二候は1年をまず、四季(春夏秋冬)に分け、それぞれを6つに分けて、全部で24の期間とした「二十四節気」さらには、それらを初候、次候、末候として、気象の動きや動植物の変化とともに見つめた「七十二候」。
伝わった中国のものと、日本版があります。
二十四節気 | 候 | 略本暦(日本) | 宣明暦(中国) | ||
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名称 | 意味 | 名称 | 意味 | ||
立春 | 初候 | 東風解凍(こちこおりをとく) | 東風が厚い氷を解かし始める | 東風解凍 | 東風が厚い氷を解かし始める |
次候 | 黄鶯睍睆(うぐいすなく) | 鶯が山里で鳴き始める | 蟄虫始振 | 冬籠りの虫が動き始める | |
末候 | 魚上氷(うおこおりをいずる) | 割れた氷の間から魚が飛び出る | 魚上氷 | 割れた氷の間から魚が飛び出る | |
雨水 | 初候 | 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる) | 雨が降って土が湿り気を含む | 獺祭魚 | 獺が捕らえた魚を並べて食べる |
次候 | 霞始靆(かすみはじめてたなびく) | 霞がたなびき始める | 鴻雁来 | 雁が飛来し始める | |
末候 | 草木萌動(そうもくめばえいずる) | 草木が芽吹き始める | 草木萌動 | 草木が芽吹き始める | |
啓蟄 | 初候 | 蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく) | 冬籠りの虫が出て来る | 桃始華 | 桃の花が咲き始める |
次候 | 桃始笑(ももはじめてさく) | 桃の花が咲き始める | 倉庚鳴 | 倉庚が鳴き始める | |
末候 | 菜虫化蝶(なむしちょうとなる) | 青虫が羽化して紋白蝶になる | 鷹化為鳩 | 鷹が鳩に姿を変える | |
春分 | 初候 | 雀始巣(すずめはじめてすくう) | 雀が巣を構え始める | 玄鳥至 | 燕が南からやって来る |
次候 | 桜始開(さくらはじめてひらく) | 桜の花が咲き始める | 雷乃発声 | 遠くで雷の音がし始める | |
末候 | 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす) | 遠くで雷の音がし始める | 始雷 | 稲光が初めて光る | |
清明 | 初候 | 玄鳥至(つばめきたる) | 燕が南からやって来る | 桐始華 | 桐の花が咲き始める |
次候 | 鴻雁北(こうがんきたへかえる) | 雁が北へ渡って行く | 田鼠化為鴽 | 田鼠が鴽になる | |
末候 | 虹始見(にじはじめてあらわる) | 雨の後に虹が出始める | 虹始見 | 雨の後に虹が出始める | |
穀雨 | 初候 | 葭始生(あしはじめてしょうず) | 葦が芽を吹き始める | 萍始生 | 浮き草が芽を出し始める |
次候 | 霜止出苗(しもやんでなえいづる) | 霜が終り稲の苗が生長する | 鳴鳩払其羽 | 鳴鳩が羽を払う | |
末候 | 牡丹華(ぼたんはなさく) | 牡丹の花が咲く | 戴勝降于桑 | 戴勝が蚕を生む | |
立夏 | 初候 | 蛙始鳴(かわずはじめてなく) | 蛙が鳴き始める | 螻蟈鳴 | 螻蟈が鳴き始める |
次候 | 蚯蚓出(みみずいづる) | 蚯蚓が地上に這出る | 蚯蚓出 | 蚯蚓が地上に這出る | |
末候 | 竹笋生(たけのこしょうず) | 筍が生えて来る | 王瓜生 | 王瓜(からすうり)の実が生り始める | |
小満 | 初候 | 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ) | 蚕が桑を盛んに食べ始める | 苦菜秀 | 苦菜(にがな)がよく茂る |
次候 | 紅花栄(べにばなさかう) | 紅花が盛んに咲く | 靡草死 | 薺(なずな)など田に生える草が枯れる | |
末候 | 麦秋至(むぎのときいたる) | 麦が熟し麦秋となる | 小暑至 | ようやく暑さが加わり始める | |
芒種 | 初候 | 螳螂生(かまきりしょうず) | 螳螂が生まれ出る | 螳螂生 | 螳螂が生まれ出る |
次候 | 腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる) | 腐った草が蒸れ蛍になる | 鵙始鳴 | 鵙が鳴き始める | |
末候 | 梅子黄(うめのみきばむ) | 梅の実が黄ばんで熟す | 反舌無声 | 反舌鳥が鳴かなくなる | |
夏至 | 初候 | 乃東枯(なつかれくさかるる) | 夏枯草が枯れる | 鹿角解 | 鹿が角を落とす |
次候 | 菖蒲華(あやめはなさく) | あやめの花が咲く | 蜩始鳴 | 蝉が鳴き始める | |
末候 | 半夏生(はんげしょうず) | 烏柄杓が生える | 半夏生 | 烏柄杓が生える | |
小暑 | 初候 | 温風至(あつかぜいたる) | 暖い風が吹いて来る | 温風至 | 暖い風が吹いて来る |
次候 | 蓮始開(はすはじめてひらく) | 蓮の花が開き始める | 蟋蟀居壁 | 蟋蟀が壁で鳴く | |
末候 | 鷹乃学習(たかすなわちわざをなす) | 鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える | 鷹乃学習 | 鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える | |
大暑 | 初候 | 桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ) | 桐の花が(来年の)蕾をつける | 腐草為蛍 | 腐った草が蒸れ蛍となる |
次候 | 土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし) | 土が湿って蒸暑くなる | 土潤溽暑 | 土が湿って蒸暑くなる | |
末候 | 大雨時行(たいうときどきにふる) | 時として大雨が降る | 大雨時行 | 時として大雨が降る | |
立秋 | 初候 | 涼風至(すづかぜいたる) | 涼しい風が立ち始める | 涼風至 | 涼しい風が立ち始める |
次候 | 寒蝉鳴(ひぐらしなく) | 蜩が鳴き始める | 白露降 | 朝露が降り始める | |
末候 | 蒙霧升降(ふかききりまとう) | 深い霧が立ち込める | 寒蝉鳴 | 蜩が鳴き始める | |
処暑 | 初候 | 綿柎開(わたのはなしべひらく) | 綿を包む萼(がく)が開く | 鷹乃祭鳥 | 鷹が捕らえた鳥を並べて食べる |
次候 | 天地始粛(てんちはじめてさむし) | ようやく暑さが鎮まる | 天地始粛 | ようやく暑さが鎮まる | |
末候 | 禾乃登(こくものすなわちみのる) | 稲が実る | 禾乃登 | 稲が実る | |
白露 | 初候 | 草露白(くさのつゆしろし) | 草に降りた露が白く光る | 鴻雁来 | 雁が飛来し始める |
次候 | 鶺鴒鳴(せきれいなく) | 鶺鴒(せきれい)が鳴き始める | 玄鳥帰 | 燕が南へ帰って行く | |
末候 | 玄鳥去(つばめさる) | 燕が南へ帰って行く | 羣鳥養羞 | 多くの鳥が食べ物を蓄える | |
秋分 | 初候 | 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ) | 雷が鳴り響かなくなる | 雷乃収声 | 雷が鳴り響かなくなる |
次候 | 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ) | 虫が土中に掘った穴をふさぐ | 蟄虫坏戸 | 虫が土中に掘った穴をふさぐ | |
末候 | 水始涸(みずはじめてかる) | 田畑の水を干し始める | 水始涸 | 田畑の水を干し始める | |
寒露 | 初候 | 鴻雁来(こうがんきたる) | 雁が飛来し始める | 鴻雁来賓 | 雁が多数飛来して客人となる |
次候 | 菊花開(きくのはなひらく) | 菊の花が咲く | 雀入大水為蛤 | 雀が海に入って蛤になる | |
末候 | 蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり) | 蟋蟀が戸の辺りで鳴く | 菊有黄華 | 菊の花が咲き出す | |
霜降 | 初候 | 霜始降(しもはじめてふる) | 霜が降り始める | 豺乃祭獣 | 山犬が捕らえた獣を並べて食べる |
次候 | 霎時施(こさめときどきふる) | 小雨がしとしと降る | 草木黄落 | 草木の葉が黄ばんで落ち始める | |
末候 | 楓蔦黄(もみじつたきばむ) | もみじや蔦が黄葉する | 蟄虫咸俯 | 虫がみな穴に潜って動かなくなる | |
立冬 | 初候 | 山茶始開(つばきはじめてひらく) | 山茶花が咲き始める | 水始氷 | 水が凍り始める |
次候 | 地始凍(ちはじめてこおる) | 大地が凍り始める | 地始凍 | 大地が凍り始める | |
末候 | 金盞香(きんせんかさく) | 水仙の花が咲く | 雉入大水為蜃 | 雉が海に入って大蛤になる | |
小雪 | 初候 | 虹蔵不見(にじかくれてみえず) | 虹を見かけなくなる | 虹蔵不見 | 虹を見かけなくなる |
次候 | 朔風払葉(きたかぜこのはをはらう) | 北風が木の葉を払い除ける | 天気上騰地気下降 | 天地の寒暖が逆になる | |
末候 | 橘始黄(たちばなはじめてきばむ) | 橘の実が黄色くなり始める | 閉塞而成冬 | 天地の気が塞がって冬となる | |
大雪 | 初候 | 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる) | 天地の気が塞がって冬となる | 鶡鴠不鳴 | ミミキジが鳴かなくなる |
次候 | 熊蟄穴(くまあなにこもる) | 熊が冬眠のために穴に隠れる | 虎始交 | 虎が交尾を始める | |
末候 | 鱖魚群(さけのうおむらがる) | 鮭が群がり川を上る | 茘挺出 | ネジアヤメが芽を出し始める | |
冬至 | 初候 | 乃東生(なつかれくさしょうず) | 夏枯草が芽を出す | 蚯蚓結 | 蚯蚓が地中で塊となる |
次候 | 麋角解(おおしかのつのおつる) | 大鹿が角を落とす | 麋角解 | 大鹿が角を落とす | |
末候 | 雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる) | 雪の下で麦が芽を出す | 水泉動 | 地中で凍った泉が動き始める | |
小寒 | 初候 | 芹乃栄(せりすなわちさかう) | 芹がよく生育する | 雁北郷 | 雁が北に渡り始める |
次候 | 水泉動(しみずあたたかをふくむ) | 地中で凍った泉が動き始める | 鵲始巣 | 鵲が巣を作り始める | |
末候 | 雉始雊(きじはじめてなく) | 雄の雉が鳴き始める | 雉始雊 | 雄の雉が鳴き始める | |
大寒 | 初候 | 款冬華(ふきのはなさく) | 蕗の薹(ふきのとう)が蕾を出す | 鶏始乳 | 鶏が卵を産み始める |
次候 | 水沢腹堅(さわみずこおりつめる) | 沢に氷が厚く張りつめる | 鷙鳥厲疾 | 鷲・鷹などが空高く速く飛び始める | |
末候 | 鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく) | 鶏が卵を産み始める | 水沢腹堅 | 沢に氷が厚く張りつめる |
日本酒「獺祭(だっさい)」も季節を表わす言葉?
旭酒造株式会社が製造販売している日本酒の有名な銘柄「獺祭」。
こちらは、会社所在地が「山口県岩国市周東町獺越」と「獺
獺(だつ・かわうそ・おそ)、川獺でカワウソ。
「獺」とは、あのカワウソを指す言葉です。
立春の次に来る「雨水」。初候を日本では「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」とし、中国では「獺祭魚(獺が捕らえた魚を並べて食べる)」時期として表しています。
https://youtu.be/K9WJfeFE9Ss?t=265
動画のように、カワウソは捕らえた魚を並べてから食べる習性があり、その様子が祭祀を行い、まるで天に供物を捧げるようであるとして「獺祭魚(だっさいぎょ)」=「獺魚を祭る(たつうおをまつる)」という故事が生まれます。
春になってカワウソが漁を始める季節を「獺祭」「獺祭魚」とした、中国古来の七十二候のひとつです。
日本酒の「獺祭」の命名の由来は
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