10月は神無月(かみなづき、かんなづき)。
和風月名でいうところの旧暦の10月のことを神無月と呼びます。
和風月名(わふうげつめい)とは
引用:和風月名(わふうげつめい)
旧暦では、和風月名(わふうげつめい)と呼ばれる月の和風の呼び名を使用していました。和風月名は旧暦の季節や行事に合わせたもので、現在の暦でも使用されることがありますが、現在の季節感とは1~2ヶ月ほどのずれがあります。
旧暦の月 | 和風月名 | 由来と解説 |
---|---|---|
1月 | 睦月(むつき) | 正月に親類一同が集まる、睦び(親しくする)の月。 |
2月 | 如月(きさらぎ) | 衣更着(きさらぎ)とも言う。まだ寒さが残っていて、衣を重ね着する(更に着る)月。 |
3月 | 弥生(やよい) | 木草弥生い茂る(きくさいやおいしげる、草木が生い茂る)月。 |
4月 | 卯月(うづき) | 卯の花の月。 |
5月 | 皐月(さつき) | 早月(さつき)とも言う。早苗(さなえ)を植える月。 |
6月 | 水無月 (みなづき、みなつき) |
水の月(「無」は「の」を意味する)で、田に水を引く月の意と言われる。 |
7月 | 文月 (ふみづき、ふづき) |
稲の穂が実る月(穂含月:ほふみづき) |
8月 | 葉月 (はづき、はつき) |
木々の葉落ち月(はおちづき)。 |
9月 | 長月 (ながつき、ながづき) |
夜長月(よながづき)。 |
10月 | 神無月(かんなづき) | 神の月(「無」は「の」を意味する)の意味。全国の神々が出雲大社に集まり、各地の神々が留守になる月という説などもある。 |
11月 | 霜月(しもつき) | 霜の降る月。 |
12月 | 師走(しわす) | 師匠といえども趨走(すうそう、走り回る)する月。 |
神無月の語源について有力な説として、よく耳にするのが
神々が出雲に集まって、次の年のことを話し合うためらしく、そのため出雲以外には神様がいなくなる(不在にする)ということで神無月、というちょっと昔話風のお話として認識していましたが、詳しく国語辞典を引いてみると
神無月
名称の由来については、雷の声が収り果つるゆえに「雷無(かみなし)月」といい、6月を「雷鳴(みな)月」というのに対するとか、10の数より上の数はないので「上無(かみなし)月」というとか、伊弉冉尊(いざなみのみこと)が崩じた月というので「神無(かみなし)月」というとか、新しくとれた米穀で酒を醸造する月というので「醸成(かみなし)月」というなどの諸説がある。なかでもっとも有名なのは、10月には日本国中の神々が出雲(いずも)大社に集まり、出雲以外の国々には神が不在となるため、「神無月」(逆に出雲では「神在(かみあり)月」という)という説である。
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
神無月(カンナヅキ)とは? 意味や使い方 - コトバンクデジタル大辞泉 - 神無月の用語解説 - 《「かむなづき」とも表記》陰暦10月の異称。かみなしづき。かみさりづき。《季 冬》「―ふくら雀ぞ先づ寒き/其角」→神在月かみありづき語源については、全国から神々が出雲大社に集まるため、諸国に神がいなくなる月の意からという俗説...
「かみな月」の語源
醸成月(かみなしづき): 新穀で新酒を醸す月(大言海による)
神嘗月(かんなめづき): 新嘗(にいなめ)の準備をする月
神な月(かみなづき):「神の月」の意
雷無月(かみなしづき): 雷のない月※大言海:言海(げんかい)は、国語学者の大槻文彦が明治期に編纂した国語辞典。日本初の近代的国語辞典。晩年の大槻文彦自身が、改訂作業に務めたのが大言海。
10月 - Wikipedia
神が上・醸・雷といろいろな解釈、語源説があるようですが、何となく神秘的な10月、神無月です。
先の、大言海に記されている神無月は
醸成月(かみなしづき): 新穀で新酒を醸す月
お酒との関わりも深そうなこともうかがえます。
出雲に神々が集まる神無月、出雲。
現在でも、出雲市として鳥取県中西部に位置するその場所は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を御祭神とする出雲大社も有名ですね。
神無月として、出雲以外には神様がいないのに対し、その時期、出雲では神々が大集合で、逆に「神在月」となるんです。
少し気になるのが、各地の神様が出雲に集合されることで、出雲以外には神様がいなくなるのか!?というと、そうではなくて、留守神とされる神様がちゃんといらっしゃるそうです。
島根県は「日本酒の発祥地」とされているそうです。
10月、神無月は、醸成月(かみなしづき): 新穀で新酒を醸す月。
出雲では神様が大集合で、
神事と深い関係の日本酒が、島根県発祥というのも頷けます。
弥生時代から連綿と伝わる島根の酒づくり|島根県酒造組合
日本最古の歴史書「古事記」の出雲神話に素盞鳴尊がヤマタノオロチを退治した「ヤシオリノ酒」。「出雲国風土記」でも“佐香の河内で神々が集って御厨を建てて、酒を造って酒宴を開いて…”とあります。それらを示すように出雲大社、須佐神社には、中国東北地方を起源に持つ“糜醴(びれい)”の酒が祭祀の一夜酒として、佐太神社には中国長江を起源にする“醴(ふんれい)”の酒が祭祀用として今に伝わっています。
佐香神社 中国浙江省より伝わった“灰持酒(あくもちざけ)”は“出雲地伝酒“として発達。佐香神社に伝わる“濁酒”は奈良天平時代の酒造りによく似ています。
このように島根には弥生時代から脈々と続く多様な酒づくりが伝わっています。これが“島根は日本酒発祥の地”という所以です。
日本酒発祥の地島根 - 島根県酒造組合 | 日本酒発祥の地『島根』日本最古の歴史書「古事記」の出雲神話に素盞鳴尊がヤマタノオロチを退治した「ヤシオリノ酒」。「出雲国風土記」でも“佐香の河内で神々が集って御厨を建てて、酒を造って酒宴を開いて…”と記載されています。このように島根には弥生時代から脈々と続く多様な日本酒づくりが伝わっています。 これが“島根は日本酒発祥の地”という所以です。
酒造りの神様をお祭りする神社のお話や、集まった神々が最後の酒宴をひらく旅立地とされる神社などなど、神話の時代と深く結びついた島根や日本酒の話題が満載の島根県酒造組合さんのウェブページは、とても興味深かったです。
日本酒、日本のお酒として国の名前がついているお酒について、あまりその期限や歴史について、まったく知らなかった今まででしたけど、神無月をきっかけに日本酒に対する考え方が、私の中で少~し変化があったように思います。
更に深く、日本酒の起源について
日本酒の歴史、その始まりは、稲作が日本に伝わったとされる時期と同じと考えられているようです。
水稲での稲作が定着し、安定して米が収穫できるようになると、その当時の日本人が酒を作るようになります。
日本への稲作伝来は、
稲作|日本への伝来
水田稲作に関しては従来、紀元前5~4世紀頃に始まったとされていたが、2003年になって、国立歴史民俗博物館が遺跡からの出土品や土器に付着した炭化物などの年代を炭素14年代測定法によって推定した結果、従来の定説より約500年ほど早い紀元前1000年頃、前11世紀に開始されたとする研究結果を発表している。
稲作 - Wikipedia
水稲栽培が安定的に行われるようになったのは、現在では「弥生時代」とされ、今から約2000年くらい前。陸作で作られるお米は、それよりも前の縄文時代には行われていたそうです。
縄文時代後期~弥生時代前期には、水稲栽培として、現在のような水田でお米が作られる光景が、日本中に広まっていったとされ、その頃に、お米を原料とする酒が造られるようになったとされています。
お米を原材料とした酒についての記録は、8世紀の「大隅国風土記(713年以降)」と「播磨国風土記(716年頃)」のなかに、「口噛みノ酒(くちかみのさけ)」と「カビ(麹)の酒」について記されています。
口嚼ノ酒(くちかみのさけ)
口嚼ノ酒は「くちかみのさけ」、人が水と米を用意して生米を口に含んで噛んでは容器に戻し、戻したものを溜めます。一晩以上の時間をおくと、唾液に含まれるデンプン分解酵素によって、米のデンプンが投下されて、空気中に存在する酵母が発酵を進めます。発酵が進んでアルコールを生成し始めると酒の香りがし原始的な酒の完成となり、それを人々が集まって飲んでいたという記録が「大隅国風土記」(大隅国は今の鹿児島県東部にあったとされる国)に記録が残っています。
「口噛み酒」は、2016年に大ヒットした「君の名は。」で有名になりましたが、気になった人も多いのではないでしょうか?
沖縄では、泡盛が普及する以前は口噛み酒が一般的で、口噛み酒の文化は、日本に限らず世界中で、この口噛み酒は存在します。
南米のチチャも原材料が米ではなくトウモロコシですが口噛み製法の酒ですし、アマゾンでは、芋を原料とするもの、台湾の山岳民族はアワや米を原料にしたものなど、原材料のデンプンを噛むことで唾液に含まれる分解酵素と、野生の酵母の力で発酵される口噛み酒は、日本酒の原型であるともされます。
カビの酒
もうひとつ8世紀の同時期の記録に「播磨国風土記」に記されたもので、現在の兵庫県付近について記した記録に
「大神の御粮、枯れてカビ(米へんに毎)生えき。即ち酒を醸さしめて庭酒(にわき)に献(たてまつ)りて宴しき」
古くなってカビが生えた米で酒を醸したことが記されています。
こちらは、カビの糖化作用を利用した醸造法のはじまりとされ、現在の日本酒の製法に通じるものとも言われる。
それでは、日本酒の起源を出雲・島根県と前に書きましたが、日本酒の起源は「大隅国(鹿児島県)」なのか?播磨国(兵庫県)なのか?
その他にも様々な説があるようです。
来る迄は、怖くて怖くて仕方のなかった宮崎県西都市の都万神社ですが、来てみると案外心地よく、どうしてもっと早く来なかったのかと、後悔10000、清酒発祥の地、との立て札在り、の思いです。#西都市 #都万神社 #清酒発祥の地 #宮崎の旅 pic.twitter.com/F07oTvXBB6
— 絶望くん (@zetsu_bou_kun) February 1, 2017
宮崎県にも。
いろいろと、日本酒のはじまりについてのお話がありますが、どれが正しいなどという話ではなくて、日本酒の歴史が、それほど古く、深く、広~い、ものだという、長く脈々と受け継がれてきた時間、これこそが日本酒の味として、今宵も、お酒を楽しみたいなぁという、お話でした。
島根県のお酒
王録(おうろく)|王録酒造
王祿 純米大吟醸
35%精米 純米大吟醸
生で2年~5年の熟成期間を経た後出荷される王祿の最高峰。袋吊り斗瓶取りと舟掛けの2種類あり、それぞれに原酒本生、オリがある。(舟掛け=袋吊り斗瓶取りを採った後の舟掛けの部分。)麹、掛け共に兵庫県産山田錦を使用。約2年に1度の発売。
丈径(たけみち)|王録酒造
丈径(たけみち)
55%精米 純米吟醸
直汲み、原酒本生の2種。麹、掛け共に東出雲町産山田錦を使用。(東出雲町上意東地区生産農家グループ 「山田の案山子」の協力により平成10酒造年度より、全量上意東地区産無農薬無肥料栽培の山田錦を使用している。)六代目丈径が初めて蔵に入った平成7年、杜氏の許可を得て、小ダンク一本を自分一人で仕込んだのが始まり。中でも直汲みは、仕込み1本分全体量の約1割を、醗酵段階で発生する炭酸ガスを独自の手法により封じ込めたもので、いわゆる荒走りの部分。
天穏 (てんおん)|板倉酒造
コメント