干し肉、干し肉といいますと、
1997年(平成9年)7月に劇場公開された、ジブリアニメ「もののけ姫」。
主人公の青年アシタカが、シシ神に傷を癒やされ、「もののけ姫」であるサンに介抱されますが、その時に、サンは干し肉を噛み砕いてアシタカに、それを与えるシーンを思い出します。
あのシーンで、私が気になったのが、
あの干し肉は何の肉なのか!?
山犬に育てられた「もののけ姫」が持っている干し肉なので、鹿とか猪?鶏肉っぽくはないなぁ。
猪肉だとすると共闘する乙事主(おっことぬし)が猪神なので違うのかなぁとか、鹿だとしたらアシタカが一緒に旅する動物「ヤックル」が鹿っぽいから微妙だなぁとか、とすれば何の肉?何肉の干し肉?といった感じでモワモワっとするこのシーン。
干し肉、がとても気になってしまいます。
今回は、生肉を干して乾燥させた保存食、干し肉について。
出来るのであれば、自分で作ってしまうことが出来るのか?というところを調べてみました。
ジャーキーと干し肉の違い
結論は、ジャーキーも干し肉も、肉を干した保存食のことで同じものなのだけれども、ビーフジャーキーに代表される「ジャーキー」といえば、燻製されているイメージ。
燻製されたジャーキーはスモーク・ジャーキーであって、純粋なジャーキー、干し肉とは分けて考えたい。
今回の干し肉は、燻製加工なしのジャーキーということで、その点が私の認識にあるジャーキーとして呼ぶ、市販のビーフジャーキーに代表されるそれとは違うポイントです。
ビーフジャーキーではない干し肉として定義しましたが、干し肉でイメージされる、その肉は、牛肉が一番に思い浮かびます。
ビーフジャーキーではないけれど、牛肉の干し肉。
生の牛肉を乾燥させた干し肉。
以前にも調べましたが、6世紀頃から仏教の「殺生戒」の教えが色濃くなる日本では、日常的な食料としての肉食をタブー、禁忌としながら、江戸時代でも牛肉など家畜肉を食べる、肉食は一般的にはご法度とされていました。
牛肉など、現在よく食べているお肉が一般的によく食べられるようになるのは文明開化以降という内容でした。
一部、そんな肉食があまり行われていなかった中でも、近江国彦根藩、現在の滋賀県彦根市付近や、現在の岡山県津山市では、特例として「養生食」として肉食が公に認めれれていたそうです。
養生食とは、養生、つまり健康の増進のための食料(食事)、薬膳料理に近い考えの中、それらの地域では古くから牛肉食が盛んだったそうです。
これらの地域では、牛肉の生産加工に関する技術的発展、それらを食べる方法、調理法や保存法といった加工法も、他の地域よりも歴史にともなう進歩・独自の文化的発展が見られます。
特に、津山市は「ホルモンうどん」でも知られ、他「干し肉」が有名なんです。
干し肉の歴史と特徴
今でこそ、冷凍技術が発達したり、「クール宅急便」に代表される冷蔵状態で配達される輸送サービスなんかも、当たり前のようになっていますが、それまでは、生の肉を他の地域に運ぶためには工夫が必要でした。
その工夫が、保存加工の技術として発展したのが、塩漬けや乾燥保存だっと思われます。
輸送を前提にする保存加工であれば、塩漬けに比べ、乾燥加工のほうが水分も抜け圧縮されるので、重量も軽く、カサも小さくなりますから一度に沢山の量を運ぶ、輸送することが可能になります。
特に、津山の干し肉は全国的にも有名で、他にも津山市では牛肉の骨の周りの肉を削ぎ落とした肉を使った「そずり鍋」や、牛すじで作ったスープを冷やして固めた「煮こごり」、近年有名になった「ホルモンうどん」など、干し肉とともに、牛肉の食文化が色濃く根付いています。
なお、津山に代表される干し肉は、生のお肉を干して乾燥させたものなので、もののけ姫のサンがしたように、そのまま齧ったりして食べるというよりも、ビーフジャーキー(スモークジャーキー)のように燻製されているわけでもないので、この干し肉は、戻して食材として使う、つまりは焼いたり、煮たりして食べるようなのですが、市販のものは、必ず商品記載の食べ方を確認しましょう。
肉を干すことで、余分な水分が飛ばされ、肉の旨味が凝縮され、エイジング・ビーフ(熟成牛肉)のように肉の質感や香りが高まるような熟成を得て、生の肉の味わいから、更に旨さがレベルアップされたものになります。
乾燥熟成肉
乾燥熟成肉(かんそう じゅくせい にく)とは、食肉を調理前にある程度の期間保存することで、食味や食感を変化させた食品である。牛肉や羊肉、ジビエ(野生の鹿肉など)などを美味しくしたり、柔らかくしたりする。日本では魚に対しても行われる。冷蔵庫がなかった時代に、ヨーロッパで食肉を冷涼な洞窟や地下倉庫などに吊るして保存したことが起源である。
肉に含まれる蛋白質の分解に伴いアミノ酸が増加するほか、微生物と酵素の作用により旨味が増す。日本でも、英語表現であるドライエイジド(dry aged)やドライエイジング(dry aging)とも呼ばれることがある。
乾燥熟成肉 - Wikipedia
ちなみに、ジャーキー(jerky)は、南米先住民族の言葉で、日に干した食べ物全般を「チャルケ(ちゃるき)」と呼び、それがジャーキーに変化したものとされています。
日本では、鮭を干した「鮭とば」や、ニシンを干した「身欠きにしん」、イカを干した「スルメ」など、海産物を干したものもチェルケ=ジャーキーということになります。
干し肉の期限、その歴史は、どこからが始まりか分からないほど、とても古く、モンゴルでは1000年以上前から作られているとする記録があったり、ジャーキーの語源とされる南米のインカ帝国の時代には、食材を干して食べていたようです。アジア大陸でも、南米大陸でも1000年以上前から世界各地で食べられている干し肉であります。
ピピカウラ
比較的新しい伝統的ハワイアンフード、牛の干し肉。
ビルトング
南部アフリカ諸国で生まれた乾燥した生肉。牛肉からダチョウやクーズーなどのジビエまで、さまざまな種類の肉が使用される。
ペミカン
カナダおよびアメリカに先住するインディアンたちの伝統的な食品で、加熱溶解した動物性脂肪に粉砕した干し肉やドライフルーツなどを混ぜ、密封して固めることで保存性を高めた食品
マハオ
南米ボリビアの家庭料理で、干し肉(チャルケ)を使った料理
さいぼし(日本)
牛馬の解体に携わってきた者により伝えられる保存食で、主に馬肉を乾燥したり燻製したり加工された加工肉、干し肉。岡山県津山、滋賀県彦根、大阪南部でも良く食されている名物。
干し肉向きのお肉は何?
牛肉、豚肉、馬肉、他にも鶏肉や羊の肉などなど、食用肉は沢山の種類がありますが、どのお肉が向いているのか?
ジャーキーの代表格であるビーフ(牛肉)
さいぼしに使われる馬肉
イタリアのパンチェッタや、中華干し肉ラーロウ(臘肉)のように豚肉
結論からすると、それぞれに良いところがあり、それぞれに干し方や、下処理も適したやり方があるようです。
モンゴルでは、鶏肉も干し肉にするそうおなので、何のお肉でも良いというのが結論になると思います。
ビーフジャーキーに使う牛肉は、霜降りの和牛のような脂が乗った部位ではなく、赤身で、ほとんど脂身が少ないお肉という共通点があります。
ですが、パンチェッタやラーロウのような、豚肉は脂身が多いので、やはりお肉それぞれに仕込み方が、様々なんだと思います。
自家製「干し肉」の可能性?
探すと、レシピサイトにも様々「自家製・干し肉」のレシピが出てきます。
牛肉・馬肉・豚肉など色々あって、自家製の干し肉は「出来る」、可能であるということのようです。
ある程度共通する基本レシピ、必要なものは
新鮮なお肉
塩などの調味料(醤油とか)
あと、干網とか脱水シートとかがあると家庭でも作りやすくなりそうですね。
オカモト ピチット スーパー 18枚ロール 魚や肉の食品用脱水シート
その他、家庭で手軽に干し肉を作りたいとした場合には、食品乾燥機を使うのも確実性が上がります。
フードドライヤー 食品乾燥機 ドライフルーツメーカー 5層大容量 [タイマー12時間設定]
食品乾燥機のほか、冷蔵庫で作るやり方や、オーブンで作る方法などもありましたので、「さいぼし」のように竿に肉を吊るしたり、ベランダや庭で、干網で干したりしなくても干し肉は作れそうです。
ただ、いろいろなレシピを見る限り、それが「手軽か」というと、少し疑問がありまして、やはりお肉を自宅で加工するにはリスクが大きいので、十分な配慮、注意が必要で、作業する場所の確保、環境の安定性なども考慮しないとなりません。
そこまで気を使ってまで自宅で干し肉づくりをする動機が無かったので、ここは、加工のプロにおまかせした市販の干し肉を選びたいところ。
ゆる~い感じで、今日は自家製干し肉で一杯飲もうというときに、いろいろ気になる点がありすぎると、ゆっくりした気分で飲めなくなるので、おつまみ用の干し肉は買うことに。
食の歴史――人類はこれまで何を食べてきたのか
ジャック・アタリ (著), 林 昌宏 (翻訳)
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