我々の身の回りは沢山の木製、建築物、家具などなどの木で作られた物で囲まれています。
木材は、それらのモノづくりのための素材として多くの利用法、活用法が作り上がられ、山には沢山の樹木が生えて、たま植林され、管理されています。
樹木と同じように地面から生える植物、野菜や山菜などは古くから人類は「食べる」ことを目的として採取して試してきました。
では、なぜ樹木は「食べる目的」の対象とならない、ならなかったのでしょうか?
上の「木を食べる」という本は、実際に木に魅せられて木を食べるという発想で試行錯誤された内容の本なのですが、私には樹木を食べるという発想すら、どこにもありません。
木を眺めて「美味しそう」と思うことも無いのは、試してないからなのか!
興味をそそられるテーマです。
タラの芽やウドといった木の芽や、木の根みたいなゴボウ(ゴボウは木ではありませんが)はよく食べますが、樹木が食べられるとしても、食べたいかと言われれば、多分食べない、かな。
セディバ猿人は樹皮を食べていた?
木からできるお酒の話
古くアイヌの民は、白樺(シラカバ)の樹液を「タンイワッカ」と呼び、そのまま、もしくは発酵させて飲む習慣があるそうです。
木そのものが柔らかなシラカバですが、その樹液からキシリトールが作られます。
キシリトールは主にシラカバの樹液から作られる、日本でも虫歯予防としての効果で認知されている甘味料です。
ガムなどにも使用されているのをよく見かけます。
キシリトールの原料はシラカバの他に、樫の木、トウモロコシの芯などから得られるキシロースが原料になっています。
栄養素の分類的には、糖質、「糖アルコール」の一種となります。
アイヌの人たちが、シラカバの樹液を発酵させたものを飲んでいた、まさしくそれはシラカバから、木から作ったお酒(アルコール)ということになります。
このように樹液を飲む習慣は、ロシアやフィンランド、中国などにも古くからあったと言われています。
樹液を発酵させて作ったアルコールから、人類は「木のお酒」として樹液ではなく、木材そのものをアルコール発酵させてつくるお酒を完成させたとか!
りも味も世界初「木のお酒」
水と食品用の酵素、醸造用の酵母のみを用いて、熱処理や薬剤処理なしに木材中の繊維を糖化・発酵する技術を開発し、世界で初めての「木のお酒」を目指したアルコールの製造方法を確立しました。
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
紀元前の古く昔から作られ、人類とともに歩んできたとされるお酒。
現在に至る長~いお酒の歴史ですが、その歴史の中でも原料となるのは、穀物や果実など「食べられる」、人がそのまま食べる素材を使用してきました。
人類が食材として、食べてこなかった素材である「木」を原料にお酒が出来るなんて本当に飲めるのでしょうか?
022年、今年5月の産経新聞の記事です。
樹木から造り出した世界初の酒が、年内にも市販される。ベンチャー企業、エシカル・スピリッツ(東京)が千葉市緑区に蒸留所を建設中で、それぞれの樹木が持つ独特の風味が特徴だ。製造技術は森林総合研究所(茨城県つくば市)が開発。同社は国の許可を取得した上で本格的な生産を始め、市場の反応を見ながら生産量を増やす。人類が手にした新たな酒を、私たちが飲める日は近い。
エシカル・スピリッツが最初に蒸留を予定しているのは杉、桜、ミズナラ、クロモジの4種類。千葉市の蒸留所が完成して酒の製造免許を取得できれば、埼玉県ときがわ町から木材のチップを運び入れ、出来上がった酒を瓶詰めするまでの一連の作業を同所で行う。
この酒の特徴は、蒸留した時点で樹木ごとに異なる風味を持つことだ。蒸留したばかりなので色は透明。ウイスキーのように、小麦やトウモロコシなどの穀物を発酵させて蒸留し、たるで何年も寝かせて色や風味をつけるのとは対照的なイメージとなる。
樹木の幹や枝を直径2マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)未満という非常に小さな微粒子にすり潰すことで、細胞壁の中から「セルロース」と呼ばれる物質を取り出すことができる。
セルロースに食品用の酵素を加えて作ったブドウ糖に酵母を投入するとアルコール度数が2%程度の発酵液ができる。これを2回蒸留すると、アルコール度数は30%程度まで高まる。
例えば重さ2キロの杉で一連の作業を行うと、アルコール度数35%の蒸留酒が、市販の酒瓶に相当する750ミリリットル程度できる。
こんなようなことらしい。
木を細かく細かく粉砕して「セルロース」を取り出して発酵させ、2キロの杉で35度の蒸留酒が750ml作れるなんて、杉林からアルコールの香りがしてきます。
使用する木の種類に応じて、出来上がりのお酒の味も変わるようです。
日本国内の樹木の種類は1200種類といわれ、世界の樹木は6万種以上。
日本で個体数の多い樹木ランキングTOP10は?
1位)ヒサカキ
2位)イタヤカエデ
3位)ヤマウルシ
4位)クロモジ
5位)ミズナラ
6位)イヌツゲ
7位)リョウブ
8位)テイカカズラ
9位)アオキ
10位)コシアブラ日本全土の樹木種の個体数:約1200種で約210億本!|久保田康裕(琉球大学理学部 久保田研究室 シンクネイチャー)
杉やヒノキだけ、単一原料から作られる「木のお酒」も特徴的でいいですが、様々な木を原料としてオリジナルなブレンドが生まれて・・・
そんな可能性を木のお酒から感じます。
そんな時代が来たあかつきには、木のお酒ソムリエとかになってみたいなぁ、なんて思うのです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20160428-00057159
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